大学院生作品 GRADUATE STUDENT WORKS
聴覚障害者と健聴者の心の距離を縮ませるアート(視覚表現)の提案
カン・ショウイ
本作品は、聴覚障害者と健聴者の心の距離を縮ませるのに役立つ、新しいアートの使い方の提案である。
近年、障害の有る無しに関わらず、地域の一員としてともに生きる社会づくりを背景に、障害者雇用促進法が改正され、障害者の社会参加の機会が広がってきている。しかし、「心のバリア」は常に存在し、乗り越える方法が少ないのが現状である。「心のバリアフリー」を目指し、アート(=視覚表現)活動を積極的に活かして、ケアを受ける側と与える側という関係から、ポジティブな影響を与え合う関係へと変換する方法を探求することを研究課題とした。
作品
作者が2013年に本学ヒーリング表現領域学部3年生の選択授業「プロジェクト&コラボレーション演習」に参加した際に出会った、筑波大学附属聴覚特別支援学校高等部専攻科造形芸術科の生徒と教員8名(筑波チーム:聴覚障害者)と本学大学院ヒーリング研究領域1年と教員7名(女子美チーム:健聴者)に協力を得て、実践研究を行った。筑波大学附属聴覚特別支援学校の文化祭『欅祭』向けのアートアクティビティの企画・実施を行うことをプロジェクトの課題とした。『壁アート』と名付けられた透明な板の両側から絵を自由に描く企画をゼロから共に作り上げ、実施するまでの2014年9〜11月に行った5回の活動の過程で、心のバリアフリーへの3つの新しいアート(=視覚表現)の活用が提案できた。①仲間感を作るために、共にチームの気づき旗を書(描)く。②互いのことをよく知るために、得意なこと・苦手なこと、してほしいこと・されて困ることを模造紙に書(描)き出す。③情報共有を保障するために、トークボールを持つ人だけ発言でき、違反した人はイエローカードを貼られるという新しいルールを導入する。
作品
作品 この結果、両チームはお互いのことを理解し合う姿勢が育ち、ひとつのグループとして積極的に関わろうとする意識を作ることができた。自然に互いに協力し、サポートし合って「作品」の完成を楽しむなど、メンバー全員が様々な場面で、心の距離の縮まりを実感した。この作品は聴覚障害者と健聴者の協働を導くための小さな第一歩となった。