大学院生作品 GRADUATE STUDENT WORKS
クリニドールができるまで
古田奈穂子
作品 「欧米版の縫いぐるみは、顔が恐いので日本人の感性に合ったプレパレーション用ぬいぐるみが欲しい」都内病院で働く病院の方が発した、この言葉から『クリニドール(クリニック+ドールの合成語)』が生まれました。
プレパレーションとは、小児患者に病気や治療の説明をし、子ども自身の頑張る力を引き出すことで不安や恐怖を軽減することを指します。欧米版の縫いぐるみの顔デザインに悩みを抱えているこのエピソードを聞いたことで、デザインには、それぞれの国の感性に適したものが求められていることが見えてきました。日本人の感性に合ったプレパレーション用ぬいぐるみとは、どんなデザインなのか。この疑問を研究のテーマとし、2011年7月~12月にかけて、調査、試作づくりを行い、『クリニドール』を制作しました。
まず、病院の方に対してニーズを知るための聞き取り調査を行い、クリニドールのコンセプトを「病院の子どもたちが病気や治療に向かう心の準備をするためのツール」と設定しました。このコンセプトは、親近感・機能性・遊び・演出・考えの5つの構成要素から成りたち、親近感、機能性に関しては、ユーザーからの意見を反映させるためにデザイン調査を行いました。「親近感」は、子どもたちの好みの顔を縫いぐるみに反映させるために顔デザインのアンケート調査を行い、「機能性」は、病院の方に実際に試作の縫いぐるみを使っていただき、問題点を発見しながら、求められる機能を探りました。2点の調査を経て、ユーザーの意見を取り入れたクリニドールが完成しました。 クリニドールが、病院にいる子どもたちの不安や恐怖を和らげ、病気や治療に向かう心の準備をするお手伝いができることを願います。
作品