大学院生作品 GRADUATE STUDENT WORKS
閒道 -Madou-
佐藤可奈
私は、香りを楽しんで鑑賞する「香道」から着想を得て「閒道 -Madou-」を考案しました。閒道体験では、参加者と一緒に身体を使って「間」をつくってみたり、「間」を聞き当てる遊びをしたり、自分や相手の心の「間」をみつける活動を通して、楽しみながら「間」の存在を知ってもらうことを目的としています。
研究テーマである、「間」の本来の漢字は「閒」です。昔は、門の中は太陽ではなく月でした。門を閉じても月の明かりがもれる様子から「すきま」を意味する漢字として生まれたものです。「間」と聞くと「二つのモノやコトのあいだ」という意味のイメージが強いですが、実は「ひまでのんびりするさま」、「静かで落ち着いているさま」という奥ゆかしい意味をもっています。
作品
「間」は、日本人の生活や文化、芸術などと密接にかかわる、日本独特の感覚です。また、生活の中で、対人関係や心理的な距離、関係調整において重要な役割をしています。蒸し暑い日本の風土の中では、昔から密着することはあまり好まれず、人と人とのあいだ、人とモノとのあいだに、適度な「すきま」や「ま」が必要でした。
しかし現在では、技術の進歩による時間の厳密化、情報通信や移動の高速化によって「間」を詰めてしまうことが多くなりました。特に、スマホや SNS が普及したことで、私たちは24 時間「いつでも・どこでも・誰とでも“つながる”」ことができるようになり、人と人とのあいだにも「間」がなくなっている傾向にあります。モバイル機器は、関係を円滑にするた めの必須ツールとなっていますが、時にそれはプライベートな時間を侵食し、ストレスの 原因になることもあります。常に「つながっている」ことは心身にも影響があるとして、「つながり症候群」、「つながり孤独」、「つながらない権利」と呼ばれる現象が大きな社会問題として浮上してきました。
作品
目に見えない「間」は意識しなければ見落としてしまいます。今日の社会、私たちは「間」をより意識する必要があると考えました。「間」を意識することは、目に見えない自分の気持ち、そして相手の気持ちと向き合うことだと思うのです。

みなさんは、日常の中でどんな「間」を意識していますか。
作品