受験生からよく出される質問事項にお答えします。
Q1.個人制作と共同制作について
質 問
大学案内などで紹介されている授業風景は共同制作が多い様に感じますが、ヒーリング表現の授業は共同制作がメインなのでしょうか。個人制作は無いのでしょうか?
回 答
個人制作、共同制作、どちらもヒーリング表現領域では大切だと考えています。授業内容、目的に応じて、個人制作の授業とグループ制作の授業それぞれがありますので、様々な状況に応じて幅広く表現する事の意味を考え、実践的に学んで行く事が出来ます。
○個人制作に重点を置いた授業
ビジュアルデザイン、キャラクターデザイン、ぬいぐるみ表現、絵本創作などは、個人制作に重点を置いていきます。
○グループワークやプロジェクトタイプの授業
医療福祉の現場・企業・NPOなどとのコラボレーション、学内外の場づくり・アートプログラム(ワークショップ)などは、チーム編成して、企画・実施する授業です。
Q2.ヒーリング・アートプロジェクトについて
質 問
ヒーリング・アートプロジェクトの活動について詳しく教えてください。
回 答
ヒーリング・アートプロジェクトは、美大におけるサービス・ラーニング(大学で学ぶ専門性を活かしながら、ボランティア活動を通じた社会との連携により社会の現状を知り、またその解決方法を探ることで社会貢献に役立てていくことを目的とした学習活動)の一環として実施しているプロジェクトです。社会的な目的を持った作品制作を通して、医療・福祉施設等の公共空間における癒しについて考え、アートの社会との関わりや必要性を探ることを目的に実践しています。そこでは、ヒーリング表現とは何かを学生自身が考えながら制作をすることで、自己の可能性を広げると共に、社会性のある新たな発見の機会を得る学習活動をめざしています。
ヒーリング・アートプロジェクトは、次のような流れで進行しています。
医療・福祉施設等からの依頼→参加者募集→学内説明会→施設現場の視察・見学→プランニング(共同制作)→原画制作(共同制作)→依頼主へのプレゼンテーション→作品制作(共同制作)→作品設置 →作品設置に対するアンケート等の調査→外部評価の検証
このような、総合病院、介護老人保健施設、その他の公共空間を対象としたヒーリング・アートプロジェクトの継続的な実施から、アートの持つ社会貢献の役割を探り、共同制作による創作表現の可能性と意味を学生自身が考える機会を設けています。
また、こうした全学的に行うプロジェクト以外に、ヒーリング表現領域の授業として独自に実施するプロジェクトもあります。
ヒーリング・アートプロジェクトの取組みは下記サイトに詳しく掲載していますのでご覧ください。
http://www.joshibi.net/healing/index.html
Q3.ヒーリング・アートとアートセラピーの違い
質 問
ヒーリング・アートとアートセラピーはどう違うのですか?
回 答
ヒーリング・アート=アートセラピーと解釈して、同義語として使われているケースがあるようですが、ヒーリング・アートとアートセラピーでは、実際はそれぞれの機能、目的、役割が異なります。
ヒーリング・アート(Healing Art)とは、「爽やかな気分になって、心が落ち着くことを目的としたり、沈んだ気持ちに対して、元気づけのきっかけとなる芸術」を意味します。それは、絵画、彫刻、デザイン、オブジェ、映像、インタラクティブ・アート、音楽など様々な芸術分野での表現手段が考えられます。
一方、アートセラピー(art therapy)は芸術療法と訳されるように、芸術による療法・治療(therapy)であり、絵画、音楽、演劇、ダンスなどのプログラムに、患者自身が個人またはグループで参加して、芸術表現を通して精神的な療法、治療をおこなうことを主な目的としたものです。つまり、アートセラピーは、芸術の表現行為そのものが重要な要素となり、それが療法の一環として行われるものなのです。
これに対して、ヒーリング・アートは、環境芸術としての役割を果たす目的で制作することが多く、建築プラン、インテリア・コーディネイトなどとも関わりながら、環境計画の一部としてのアートの立場を考え、空間をどう演出して利用者の気持ちが和らぐ効果(ヒーリング効果)を作り出せるかという点を検討し、アートを設置するということが基本になります。こうした際、現場の状況に応じた癒される空間作りという目的を持って、それに適応したアートの制作と設置を検討するのです。したがって利用者という不特定多数の人間にとって、その空間がどうあるべきかを考えてアメニティー(amenity:快適性)を高めるためのアートを制作するという点が重要です。ヒーリング・アートとアートセラピーでは、異なった特色と役割があるのです。